2023.9.24
■「吉野林業と優良材」に学ぶ (80)
種子及び苗木①
―明治時代における育林技術-
(吉野杉の苗木養成の歴史は古く「広益国産考」にも詳しい記述があるが、ここでは「吉野林業全書」並びに土倉庄三郎氏による「吉野木材及桴の解説」を中心に解説していく。)
杉種子は樹齢60~70年、桧は40~50年の母樹より採取するものを最良とする。
採取時期は十月中旬頃の球果がよく熟した時期で、球果の口が開かない内に枝ごと採取してよく乾燥させる。その後種子を分離精選して再度乾燥させ、渋張籠、または渋紙袋に入れて湿気を避け、翌年の清明(三月節=4月初旬)の頃まで貯蔵する。
桧種子の場合も杉に準ずるものとする。
参照:「吉野林業と優良材 (岩水豊 著)」
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母樹の樹齢について「吉野林業全書」には次のような記載があります。
最良とされるその年数に達しない若木から種子採取を行うと、実生苗(種から発芽させた苗)を植付けた際に、早く実がなってしまって成長が悪い。
逆に100年生前後の木から種子採取を行うと、種子が小粒で小さく未熟なものが多いとされ、形の良い木を選び、その木のいわゆる最盛期に種子採取を行うことが重要である。
現在の吉野林業における再造林が活発でなく、高樹齢帯資源が多い状況からは、その「最盛期」へのこだわりを継続させることも危惧されます。
あらゆる場面に課題は山積しているのですが、しっかりと整理把握し対処していかなければなりません。
吉野林業全書に学ぶ(10)/杉・桧種子採取の季節
吉野林業全書に学ぶ(11)/杉・桧種子採取の母樹の年数
吉野林業全書に学ぶ(16)/杉・桧種子の乾燥の仕方
吉野林業全書に学ぶ(17)/杉・桧種子生産の方法
吉野林業全書に学ぶ(18)/杉・桧種子の精選