超現代語訳
川上村の吉野林業を学ぶ
これからの時代に活かせることを、
川上村と吉野林業の歴史に学びます。
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2022.10.10
■「吉野林業と優良材」に学ぶ (54)
吉野林業の育林の基本的な考え方⑥
―優良材生産と育林技術-
今日の吉野式集約施業は、借地林業制度や山守制度を軸にした経営構造を背景に、樽丸という有力な商品生産の登場によって、生産技術的側面からそれに適合する材質の木材生産を行う育林施業が形成されたわけで、それはすなわち販売単価の高い付加価値材を育成して森林収益を高めるという、資本側の要請とも一致したのでなおさらに発展した。
今日(「吉野林業と優良材」発刊当時の昭和57年頃)、樽丸生産は第二次世界大戦を契機に大きく後退してしまった。
しかし、生産目標は樽丸に代わる赤杉造作材をはじめ、スギ、ヒノキ柱材、磨丸太等付加価値の高い高級建築用材に重点を絞っており、戦後以降総じて集約的な枝打ちの導入が行われ、伐期の短縮、ヒノキ造林への傾斜などいくらか修正はされているが、密植、多間伐を基本にした吉野式施業体系に著しい変化は起こっていないと見てさしつかえはない。
参照:「吉野林業と優良材 (岩水豊 著)」
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戦後の復興や経済成長にともなう爆発的な木材需要に対応して、丸太輸入関税の撤廃(昭和26年)、木材貿易完全自由化(昭和39年)などが導入され、外国産材の台頭が進み昭和55年頃をピークに木材流通価格は下落の一途を辿ります。
さらに建築様式や内装デザインも大きく変化し、高級建築用材が付加価値材として扱われることも激減、そしてバブル崩壊、時代は一気に林業をどん底へと押しやりました。
しかしこの流れもアメリカ産材を中心に高品質な木材が安定的に流通されたのですから、外国産材憎しでは語れない側面もあります。
安定供給を確立させる山づくり、無垢材の欠点をカバーする品質確保、安定需要を生む主力商品の流通、未来はただただこれらの目的を達成するために、愚直に進むことができるかにかかっています。