超現代語訳

川上村の吉野林業を学ぶ

これからの時代に活かせることを、
川上村と吉野林業の歴史に学びます。

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2022.3.6

■「吉野林業と優良材」に学ぶ (30) 
吉野林業と優良材の形成③

-自然的条件と材質形成-

吉野川流域の気候については、気温はマイナス7度~37.5度、平均13.6度、降水量は大台ケ原といった多雨地帯もあるため年間1,481㎜~5,412㎜と幅があるが、最上流の川上村において年間平均2,146㎜で、山間部ではどちらかと言うと多い方に属する。積雪は所により1メートルに及ぶところもあるが、山間部の多いところで数十センチ程度といったところで必ずしも多い方ではない。

風向きは西ないし南西、北西風が多い。台風は1、2回通過するが、総じて気候は温和で材木の育成に適したところである。

そうした中で、自然的条件の中で吉野林業の優良材の形成に関連するのは「気温」であろう。といのも、川上村の場合、冬期の気温が月平均1.6度~5.6度と極めて低く、材木の成長を極度に抑制するので、これが秋材(木の年輪の内、夏から秋の終わりにかけてできた部分で、春材に比べて材質が堅く緻密)の形成に影響を及ぼしているものと見られる。

ちなみに吉野杉の年輪構成を見ると、秋材の幅が小さく、いわゆる糸目になっているため、柾目に挽いた場合に春材とのコントラストが鮮明で美しく見える。これは温暖な地域の杉材が、年間を通して成長が良いことから秋材の幅が大きいことと比較した場合、明らかに異なる部分である。

したがって吉野材の柾目は、秋材と春材の区分が鮮明で、視覚的にも美しく商品価値を高めることになるのである。

川上村の吉野林業と土倉庄三郎

 

参照:「吉野林業と優良材 (岩水豊 著)」

※各種記載データは本書発刊の昭和57年頃のものとなります。

 

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平成10年9月に発生した台風7号により激甚災害指定を受け、吉野林業地帯も大きな被害を受けています。地球温暖化によってこういった台風災害や、平均気温上昇による影響が出てきているのも事実です。

著書の発刊当時からじわじわと自然的条件は変化しており、長期的には吉野材の形成に影響するところかもしれません。人的物的にも厳しい状況が続く吉野林業において、自然的条件が最大の脅威ともなれば恐ろしいところです。

脱炭素社会の実現は、様々な分野で大切な取り組みとなるわけです。


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