超現代語訳
川上村の吉野林業を学ぶ
これからの時代に活かせることを、
川上村と吉野林業の歴史に学びます。
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2022.5.8
■「吉野林業と優良材」に学ぶ (37)
吉野林業と優良材の形成⑩
-林業制度と優良材の形成-
吉野材の形成は、地質、土壌、降水量などの自然的条件に加えて、集約的な施業(育林技術)が大きな要因になっていることは言うまでもない。
その集約施業促進の背景になっているのが山守制度である。集約的な吉野式施業の主軸になっている密植、多間伐は、結果として、かつて目標にされた樽丸用材に適合する年輪幅の緻密な良質材を育成することになるのである。
しかし、吉野式施業は単純にそれのみを目標にして始められたものではない。そもそも密植の目的はもちろん樽丸に適合する良質材生産を意図したものであるという説もあるが、他の理由として
①人工植林当初には小面積の焼畑跡地へ農業的感覚で植林を行ったため自然に密植になった。
②地上権山の売買は植付本数で取引が行われていたので、本数の多いほうが取引上有利であった。
③疎植より密植のほうがすべての面で手入れが余計にかかるので、地元労働者の雇用増大と安定に寄与し労賃を多く稼げる
などといった経済的理由が背景になっていた。
参照:「吉野林業と優良材 (岩水豊 著)」
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吉野林業について改めて学び直そうと思い立ったのが、ここにさらりと記述された「密植」の起源についてです。吉野林業を説明するにあたって必ず「密植」の説明を行いますが、年輪幅が細かな美しい吉野材を生み出す要因のひとつとなるのは必然ではあるものの、良質材生産を意図して「密植」が始められたというのはどうも腑に落ちなかったのです。
ここにある①~③の説明を知った時は、とてもすっきりした記憶があります。現在、「密植」について説明させて頂く際は、必ずこの内容を盛り込むようになりました。