超現代語訳

川上村の吉野林業を学ぶ

これからの時代に活かせることを、
川上村と吉野林業の歴史に学びます。

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2020.10.10

■「吉野林業全書」に学ぶ (51) 
杉材の木質種類とその用途 ③

【真目疎大木(まめあら)】
植付けが疎植で表土が肥沃なところに成長したもので、植付け後20年位までは成長が速いがその後は間伐しないため、樹木が自然に委縮して木目のみが密になったものである。この木は樽丸製造用に適している。

【瘠深木(せぶか)】
白太の多いものの多くは表土は浅いが、肥沃な場所に成育したものが多い。木目は整っているので材積は少し減るが、樽丸製材用にして問題はない。

【木目密なる木(密目木)】
土壌が赤色で肥沃でない瘠地に成育するもので、木目は極めて密である。この中で木目が整い紅色を帯びたものは樽丸に用いられる。

【木目疎大木(めあら)】
植付けが疎植で肥沃な土地に成育したものである。そのため成育が速く木質は不良で、荷重力も弱い下等材である。樽丸や薄板には不適当で需要もほぼないので、厚板にして床板とする。

【柾閉木(まさとじ)】
土壌の良し悪しには関係なく、風害の多い所に成育したもので、柾目が閉じて木目が正しく並び通っていないものである。この木は木目が普通なものは板類に用いられるが、樽丸にするには利用部分が少なく不適当である。

【脂木(あぶら)】
表土が浅く、岩石のある山の尾根筋などの常に風害を被る所に成育したもの。また、多量の樹脂を出して外部を傷つけるため、その成育が阻害されたものである。この木はあまりよくないので製造用には用いられない。杉皮も脂が多いため使用されない。小径木はいろいろと利用されるが、大木では利用価値がない。

川上村の吉野林業と土倉庄三郎


参照:「吉野林業全書」

 

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【木目疎大木(めあら)】のところで、荷重力も弱いなどとされていますので、京都大学 生存圏研究所の中川貴文先生と進める「川上村産吉野杉の耐震性能検証実験」についてのお話を少しさせて頂きます。(ちょっと話はそれますが・・。)

感覚的にも木目が粗い材料と、木目が詰まった材料では、後者のほうが強いと感じて頂けると思います。身近なところでは、木の木目も入っていないような安い割箸はすぐに折れてしまいませんか?

また、住宅の構造材には、やわらかい杉より桧を使った方がいいんじゃないの?というのが一般的なのかもしれません。

そこで、ヤング係数 E70以上の品質を確保した「川上村産吉野杉」の構造材を用意し、国土交通省 告示標準仕様の耐力壁にしてせん断試験を行いました。

数値結果は、

一般的な杉材の耐力壁(告示標準仕様)
壁倍率:3.7倍

川上村産吉野杉の耐力壁(試験平均値)
壁倍率:5.11倍

という結果が得られ、「川上村産吉野杉」の構造体は、非常に粘り強いものであるということがわかりました。

そして実は、同等の桧材でのせん断実験データ(壁倍率)は、「川上村産吉野杉」のデータとほぼ変わらなかったのです。

現在、建築業界に限らず、木材を使うことに求められるのは、


・品質確保


・性能や効能のエビデンス


・安定供給(ここは大きな課題・・)


・(違法伐採の観点からの)トレサビリティー


等々となりますが、一般ユーザーでもネットで簡単に情報収集できる今では、数値的根拠が見える化されることは非常に訴求力も高く、親しみやすい情報として受け入れてもらえそうです。

中川先生をはじめ、たくさんの人々の協力を得て、「川上村産吉野材」の良さを、改めて確かめていきたい、選んでもらえるようにしていきたいと思います。


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