超現代語訳

川上村の吉野林業を学ぶ

これからの時代に活かせることを、
川上村と吉野林業の歴史に学びます。

  • HOME
  • >
  • 超現代語訳 川上村の吉野林業を学ぶ

2020.10.18

■「吉野林業全書」に学ぶ (54) 
桧材の木質種類とその用途 ②

【疵腐木(きずぐされ)】
土地の肥瘠や土壌の良し悪しとは無関係で、外部からの傷を受け自然に腐りが生じたものである。つまり、岩石が転げ落ちてきて傷がついたとか、間伐時や出材時の損傷が年数を経過するにつれてその腐れが激しくなり、ついには芯材部まで及んで空洞になるものである。傷にはよくよく注意すべきである。この木は利用材積は減るが、樽丸製造用に利用すべきである。

【膨張木】
土地の肥瘠には関係なく風害のために変化したものか、または、その木の性質によって生ずるもので、焼木とほとんど同一のものである。この木は樽丸製造用には不適当である。

【馬木(うま、あて)】
植付けの不注意から生ずるのと、風雪やその他の物に触れ横に傾いたまま成育したものである。これらは植栽後の保護が行き届いていないために生じる害であり、常に保護は怠ってはならないのである。この木を樽丸製造用にするのは困難で、材積もかせぐことができない粗悪木である。しかし、曲がりを上にして両端を柱にはめ、真ん中は柱を用いず架け渡し、その上に束柱を立てて上から荷重を持たせる建築用材の中牛木(登り木)には適している。

【腐木】
表土が浅く、
その木が成長するにつれて根先が岩盤につかえて腐れが生じ、ついに幹に及んで芯腐れを生ずるもので空洞木となる前兆である。この木は芯材の節の多いところは朽ち果てており、そのため油気のある赤色さえ失われ全体が白色となる。したがって、利用材積は減っても木質は良好だから樽丸製造用に使用される。

【空洞木(くうどう)】
芯腐れ木が年数を経過するにつれて次第に腐れを増し、ついに空洞になるものである。もっとも、数百年を経たものは土壌に関係なく空洞木になるものが多い。ただし、桧は杉と比べると老樹は空洞になり易いものである。この木は空洞となった腐った部分を除いて、その残りを板もしくは小割ものに使用する。

【目廻り木】
土質の良し悪しに関わらず、強風被害を受ける所に成育したもので、自然と木目の間に離れを生じてしまっているものである。この木は樽丸製造用には一切用いられず、その他の用材にも使いにくいもので、わずかに丸太のまま使用される劣等木である。

(備考)
杉・桧の木質良否判定材料としては、第一、土中の温度、第二、土壌の肥瘠、第三、植栽の適否、第四、樹木の性質、第五、天然の変化、第六、外部よりの被害損傷等、といったものに基づいているからよく注意すべきである。

川上村の吉野林業と土倉庄三郎


参照:「吉野林業全書」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

日本の林業地において、杉8割桧2割といった生産量が一般的で、奈良県川上村の吉野林業においても同様です。桧が有名な林業地では半々の割合のようですね。

また桧は、油分も多く杉と比べれば硬質で水にもある程度強く、外部の建材としても使われます。桧風呂はよく聞いても杉風呂ってあまり聞きませんね。

枝打ちといった手入れについて、吉野林業の密植にあっては、杉の枝葉は風などで擦れ合って勝手に落ちてくれますが、桧はしっかり枝打ち作業が必要です。

色々と理由がありますが、原木の流通価格では杉より桧のほうが高くなっています。

高いというのはあくまで杉・桧の比較で、全盛期との比較になるといずれも大きく減少しています。

この現状で「国産材を使おう!」「SDGs!SDGs!」なんて流れに漫然と乗っかって原木を流通させるだけでは、山にお金は戻りません。

しかし、こういった現状には可能性がたくさんあるという人も多いですね。大きな変革はちょっとしたことから始まります。


最新の記事

アーカイブ

  •  

    • 2023 (31)
    • 2022 (56)
    • 2021 (98)
    • 2020 (73)
  • ≪■「吉野林業全書」に学ぶ (5...

    ≫■「吉野林業全書」に学ぶ (5...

    最新の記事

    アーカイブ

  •  

    • 2023 (31)
    • 2022 (56)
    • 2021 (98)
    • 2020 (73)
  • ページトップへ