超現代語訳

川上村の吉野林業を学ぶ

これからの時代に活かせることを、
川上村と吉野林業の歴史に学びます。

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2020.8.15

■「吉野林業全書」に学ぶ (33) 
山地への杉・桧植付けとその季節 ③

杉・桧の植付けは、1町歩(約3,000坪)に対して苗木10,000本を植え付けるのが通例であるが、地味の良し悪しと木材運搬が容易であるか等により多少の加減はある。また地方の慣習によってはその粗密度を加減することもある。
 
1町歩に20,000本~30,000本を植え付ける密植をするところがあるが、植付け後12、3年目から30年目までは間伐材による収益を多く得たとしても、枯損木も多く幼齢の時から勢力は衰えて生育は遅れるので、100年後の計算をしてみると、結局、材積も少なく利益も少ないことになる。
 
これに対して、1町歩に300本~1,000本の植付けとする疎植を行うところもあるが、これは植付け後、数年もしくは10年後も雑草が繁茂しツタやフジが蔓延し、その手入れに多大な費用が掛かる。しかも下枝が落ちないため根元ばかり太って伸長せず、桐のような木目で節も多く木目は粗大、木質は粗悪で品質は劣等になる。
川上村の吉野林業と土倉庄三郎
その上に間伐材収益も少なく、良材となるべきものも優勝劣敗がはなはだしくかえって多くの枯損木が生じてしまう。結局、密植の場合より利益はずいぶんと少なくなる。しかも少数の立木に広大な土地を要し、ほとんど自然林と同様になってしまうので決して良いとは言い難い。
 
そこで、我が吉野地方のように1町歩に10,000本~12,000本を地味をよく吟味して植え付けると、手入れも少なく、植付け後14、5年から100年までに、12、3回の間伐でしっかり収益を得ることができる。また、100年以降には大径木の良材を産出できることを信じて疑わない。
 
もっとも我が吉野地方の杉・桧は地味による特産物であるのかもしれないが、人工的な部分においてもその殖産培養に力を尽くし適切な技法を施していくから、幹は完満通直で元末同大の樹高も高い。
川上村の吉野林業と土倉庄三郎
これが、我が吉野杉・吉野桧が天下に比類なき名声を博する所以である。


参照:「吉野林業全書」

 

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「100年以降には大径木の良材を産出できることを信じて疑わない。」この部分に、はっと気づかされました。
 
「吉野林業全書」は土倉庄三郎が明治時代の終わりごろに先人たちの知恵や技術をまとめ編纂したものですが、この土倉式吉野林業のマニュアルによる成果物は確認できないんですね。
 
その当時で吉野林業が約400年の歴史だったわけですから、様々な知見は集約され確たる技法マニュアルであることは間違いないですが、そうですね、土倉翁は結果を見ていない。
 
土倉翁、信じて疑わなかった素晴らしい吉野杉・吉野桧になっています。あなたの植えた木が、川上村の学校に使われることになりましたよ。何も心配しないでください。我らが吉野林業はしっかり守っていきます。
(2020年お盆に祈りを込めて)

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